すいもあまいも

即売会参加レポブログになりつつある

COMITIA104終了後に投稿したPush&Review

『under the rain』《anticycle》

雨の日の沼でケンカした二人の少女。別れた記憶も曖昧に再開し、仲直りに交わしたキスはなぜか沼の味がして。存在の同一性に関する見解の衝突が生んだ悲劇は、痛々しくもどこか妖しげな優しさで胸を刺す。自身と相手に閉じた思春期的世界観ゆえの独善に心揺さぶられる。

『199X年の論客たち』《ABXXX》

サンプルに選ばれた市民が政治的選択を直接迫られる日本で、ある大学の弁論部員がサンプルとして選ばれる。議論の末に選択を放棄する部員の達観した姿に心ざわつくのは、議論にすら目を背ける自身に対する良心の呵責かもしれない。読者の心に深く切り込む人間ドラマである。

『前から2両目』《s/h》

朝夕の電車内は女子高生の楽園! 女子高生好き女子高生による女子高生観察記4コマ。身体を動態的に描くコマぶち抜きと身体部位を舐めるように捉えるカメラワークの合わせ技が生み出す濃密なフェチ感の快楽性と言ったらない。奇誌・きららミラクが生んだ新奇なる一作。

『こむぎみっくす』《Smith of Shadeer's》

こむぎ、四歳、女の子。夢は憧れのよっしー先生と結婚すること。そんな幼稚園児の日常4コマ。先生のためにと背伸びしたイメトレを欠かさず大人ぶるこむぎ。彼女を優しく見守りつつ親バカな大人げなさも見せる両親。それぞれのギャップが面白可笑しく、また心温まる。

『ワーロックの庵結 一』《ノジラグ》☆

小さな旅館を守ると誓言する娘と、彼女に不審がられながらも旅館に居座る小説家の男の物語。孤高を頑なに貫く娘と、その孤高を理解して歩み寄る男。4コマで描かれる二人の生き様が、冬と春の対照のように美しく、そしてその邂逅かのように劇的に心を揺さぶる。続編が待ち遠しい。

『法律擬人化入門(上三法編)』《羊図書館》☆

憲法、民法、刑法を中心とした法律擬人化4コマ。専門用語を織り交ぜつつもコミカルな4コマが可笑しく、多様な視座からの法律解説はためになる。法律の印象と特徴を容姿、言動、関係性で描く擬人化も巧い。バランスの妙が生んだ、タイトルの期待を裏切らない作品である。

『Sleeping Fool』《むらさきいろのよる》

居眠り中に幽体離脱してしまった佐々木さん。級友で霊媒体質の橘さんは彼女の体を元に戻そうと奔走する。端整な描線とコミカルな表情で描かれる、可愛く楽しいドタバタ劇。真面目な橘さんがおバカな佐々木さんに振り回されながらも心和らぎ絆されていく様が温かい。

『メタメタる・パニック』《ルート十二面体》

漫画内存在であることを自覚する男女によるラブコメ漫画。固まらない設定や荒れていく作画を「作者」の倦怠だと理解する二人が、消えゆく作品世界で互いの存在を求めて泣き叫ぶ姿の、何と真直なラブコメ模様であることか! メタとベタの巧みな交錯が実に刺激的である。