すいもあまいも

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数字で見る4コマオブザイヤー2016(非公式集計)

 昨年末も毎年恒例の「4コマオブザイヤー2016」が開催されました。主催の八戸さんと運営の皆さんには毎年頭が下がります。

 さて、そんな4コマオブザイヤーについて、ふと「公式サイドから統計値とかってこれまで公表されてたっけ? せいぜい参加者数くらい?」と思ったので、独自にデータを収集、集計してみました。この記事ではその結果と考察を報告します。なお、この記事の内容は私が独自に集計したものであり、非公式のものであることをご承知ください。

データ収集方法

 私・sweetpotato14 を起点として、投票者ページの「似た人」をたどって到達できた全ての投票者ページをデータとして収集しました。収集を実施したのは、投票が締め切られた後、12月19日の午前1時です。

 この方法により、参加者471人分の投票ページを収集しました。公式の発表によれば参加者は「500人越え」とのことなので、おそらくその内の約9割は収集できたのではないか、と思っています。

みんな何作品に投票してるの?

 まずは参加者の投票数の分布を見てみましょう。新刊部門と既刊部門の投票数でクロス集計をしました。

 最も多いのは新刊5単行本・既刊5単行本に投票した参加者です。投票の上限が各部門とも5単行本であるため、多くの参加者が両部門とも上限まで投票したことになります。

 片部門で見ると、既刊5単行本に投票した参加者の方が、新刊5単行本に投票した参加者より多いことが分かります。既刊部門の方がノミネート数が多く、また参加者にとっては既知の作品の続巻ということもあり、新刊部門よりも投票しやすいのではないか、と推測しています。

 投票数が少ない領域にも参加者数の小さな山があることも見て取れます。これについては本記事の後半で述べます。

みんなどれくらい投票にコメントを添えてるの?

 次に、投票に添えられたコメントの文字数を見てみましょう。ここでは各投票に実際に添えられたコメントからURL相当の文字列を除去し、さらに冒頭と末尾の空白文字列を除去して、残った文字数を「コメント文字数」としました。

コメントが添えられた投票ってどれくらいなの?

 まずはコメント率を見てみます。コメント文字数が1文字以上の場合を「コメントあり」、0文字の場合を「コメントなし」としました。

 各部門ともコメントが添えられた投票は約3分の1です。新刊部門の方が若干ですがコメント率が高くなっています。

コメントの分量ってどれくらいなの?

 さらに「コメントあり」を掘り下げ、コメント文字数の分布を見てみます。コメント文字数を10文字きざみで階級にし、各階級での投票数をカウントしました。グラフ横軸の「[a,b]」は「a文字以上b文字以下」を意味します。

 両部門をまとめると、最も頻度が高いのは11文字~30文字と言えるかと思います。ひとこと、ふたことくらいのコメント分量でしょうか。

得票数ってどれくらい偏ってるの?

 続いて、ノミネートされた各単行本の得票数の偏りを見てみましょう。いわゆる「パレート分析」です。横軸に順位を取り(左に行くほど上位)、縦軸に棒グラフで当該順位の単行本の得票数を、折れ線グラフで累積投票比率(当該順位までの得票数の合計を全得票数で割った値)を示します。横軸の右端は各部門にノミネートされた全単行本数(新刊177、既刊317)です。

 あわせて、累積得票比率が50%または80%を初めて超える上位集団を表に示します。

累積得票比率 新刊部門 既刊部門
50%超 上位21位(上位11.9%) 上位24位(上位7.6%)
80%超 上位63位(上位35.6%) 上位88位(上位27.8%)

 グラフおよび表から、「80対20の法則」ほど強くはないものの、得票数に偏りがあることが分かります。また、既刊部門の方が新刊部門よりも偏りが若干強いように見えます。

どの出版社の単行本がたくさん得票してるの?

 次に、出版社ごとの得票数を見てみましょう。出版社の判別は、AmazonへのリンクURLに含まれるASINをISBN-10と見なし、その先頭部分を見て行いました。さらに、芳文社(48322~)についてはKRコミックス(483224~)とまんがタイムコミックス(483225~)を、KADOKAWA(404~)についてはメディアファクトリー(40406~)とその他を細分化しました。グラフを見る際は、同じ出版社でも両部門で凡例色が異なる点にご注意ください。

 芳文社が圧倒的に強いです。両部門で過半数の票を得ています。その中でもKRコミックスがタイムコミックスよりも多く得票していることが分かります。既刊部門ではKRコミックスのみで全得票の半数に迫る勢いです。「4コマオブザイヤーはきららが強い」という肌感覚が数字でも示された形です。

 新刊部門ではKADOKAWA竹書房をおさえて得票数2位になりました。そのうち3分の2はメディアファクトリーが占めています。得票単行本をつぶさに見ていくと、コミックキューンの単行本が大きく寄与していることが伺えました。

 既刊部門では逆に、竹書房が2位、KADOKAWAが4位です。KADOKAWAはまだ続巻がそれほど刊行されていないということでしょうか。既刊部門3位の幻冬舎は『ふたりべや』が、6位の徳間書店は『とりきっさ!』がほぼ全ての票を獲得しています。

 個人的に面白いと思ったのが講談社の存在感です。全体での割合は小さいながらも、三大マンガ出版社の中では各部門ともトップの得票数です。こちらも得票単行本をつぶさに見ていくと、ツイ4の単行本が相当数を占めていることが伺えました。

いわゆる組織票みたいなものって存在するの?

 最後に、前半で挙げた、投票数が少ない領域にある参加者数の小さな山について見てみましょう。結論を先に述べると、これらは「作者の呼びかけに応えた参加者」と言えるでしょう。新刊1単行本のみに投票した参加者が投票した単行本、および既刊2単行本にのみ投票した参加者が投票した単行本ペアを見ると、作品の偏りが明確に出ています。

 新刊1単行本では『すくりぞ!(1)』『ギャルとオタクはわかりあえない。(1)』に、既刊2単行本では『ふたりべや(2)(3)』『とりきっさ!(3)(4)』に投票が集中していることが分かります。そして、これらの作品の作者は投票の呼びかけを投票期間内にツイートしています。

 このような作者の呼びかけに応えた投票は、いわゆる組織票とまでは言えないにしても、順位に影響を与えている投票であることは疑いようがありません。前述の得票数の偏りのグラフとあわせて見ていただければ、10票以上の投票が順位を如実に押し上げることは読み取れるかと思います。

 2016年は単行本帯に4コマオブザイヤーの文字が書かれる作品があったり、特集を開催する書店があったりと、ウェブの外にも広がりを見せています。好むと好まざるとに関わらず、4コマオブザイヤーは読者のみならず作者にも影響を与えている企画であることが伺えます。

 なお、新刊1単行本・既刊1単行本に投票した参加者が投票した単行本ペアについても、同作品の単行本1巻・2巻というものが一定数見られましたが、前述の新刊1単行本や既刊2単行本よりは頻度が小さかったため、この記事では割愛します。

おわりに

 この手のマンガランキング系の企画って読者にとっては目的ではなく手段だと思うので、自身の読書体験をより豊かにするためのいちツールくらいに思っておくのがちょうどいいんじゃないかと思いました、まる。