すいもあまいも

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京都精華大学マンガ学部の卒業・修了制作展を見てきた&竹熊健太郎さんの講演を聴いてきた #seikaweek2013

朝、竹熊健太郎さんが京都国際マンガミュージアムで講演をするとツイートされていた。調べてみたら、精華大学マンガ学部の卒業・修了制作展の一環としての講演らしく、こりゃ面白そうということで卒展と併せて見に行ってきた。

京都国際マンガミュージアム烏丸御池に綺麗な建物を構えていて、構内にはカフェもあり、美術館的なスポットとしてアクセスしやすかった。卒展が開催されているかたわらで一般展示もしており、休日だからか子供が多く、また海外からやってきた団体さんらしき方々もいた。

卒展はマンガ学部の現行五つのコースごとに部屋を割って展示していた。以下に印象に残った作品を書きとめる:

  • ストーリーマンガコース・新國未菜実さんの『誤植の弟』は、誤植が植物として見える主人公が「にんげん」という誤植を切って土に植えたら人間が生えてきた、という話。独特の世界観、怪しさの宿る描線、そして誤植に対する主人公の真摯さに引きこまれた。展示では作品を立体的なパネルにしていて、主人公が見ている世界ってこんな感じなんだろうなと思った。
  • ストーリーマンガコース・辻杏奈さんの『fuffy*』は変人女子と普通男子の日常4コマ。ハイテンションな学生ギャグと端整な描線に少女ギャグマンガという印象を受けた。『別冊マーガレット』の付録『別マ TWO vol.4』に掲載歴のある作品と言うことで大いに納得した。同じく辻さんの『姉と彼と僕。』は、姉が恋をした相手が自身の同級生だった弟の短編。姉の暴走っぷりを淡々と受け入れる彼、そしてその様子にやきもきする弟の関係性が面白可笑しい作品だった。
  • カートゥーンコース・松永千種さんの『ボクの好きな人』『私のとなりには』は一人の人間と一匹の動物の関係性をそれぞれの視点から描いた一対の絵本的作品。そうそう、「好き」ってこういうことだよね! と両者の想いに心底共感した。『私の~』の「君が何ひとつできなくたって」以降の言葉にはウルッとくるものがあった。
  • カートゥーンコース・小倉久治さんの『CYCLIFE』は、もしおとぎ話の動物たちが自転車に載っていたら、というテーマのイラスト群。桃太郎たちはタンデム自転車、竜宮城に行く亀も自転車、サンタのトナカイたちも自転車(どこか『E.T.』っぽい!)と、一連の自転車描写にイラスト群総体としてパロディ的魅力があった。
  • 他、作品としてはタイトルからインパクトある『援交少女は死にました』と、「風刺」ジャンルながらも日常描写とタイトルが前向きな『新しい世界』が気になった。また、作家としては4コマをいくつか描かれていた大澤学さんが気になった。

竹熊さんの講演はギャグマンガについて。精華大学に4月からギャグマンガコースが新設されることを絡めつつ、ギャグマンガとは何かということや、常識という観点からのギャグマンガの分類など。明快な整理が分かりやすい講演だった。実際にギャグマンガを引いてなぜ面白いのか解説をする場面では、そういう行為ほど無粋なものはないとおっしゃっていたが、学問として理解し体系づける行為はむしろ真摯なスタンスであると感じた。以下、自身の理解をとりとめなく書きとめる:

  • ギャグ:即興性の強い冗談、物語から切り離されたもの、逆や裏の発想
  • コメディ:ストーリーがついた笑い、物語が不可欠
  • 人間の秘めた欲望を解放するものが「笑い」
  • コメディはマンガ家と編集者で打ち合わせができるが、ギャグはマンガ家の感性によるところが大きい
  • 常識ギャグ(サザエさん)、反常識ギャグ(がきデカ)、非常識・ナンセンス・不条理ギャグ(伝染るんです
  • 非常識ギャグで売れる人は可愛いキャラクターを持っている(例:ぼのぼの、かわうそ君)
  • ギャグマンガは常識や日常を知っていないと描けない
  • パロディマンガのギャグ手法は反常識ギャグ的

全体の感想としては、想像以上に楽しめた。ストーリーマンガとカートゥーンを読んで眺めるだけでも、美術館的な感じで十分に楽しめる。アニメーションは流しっぱなしにしてもらえるともっと気軽に見られると思ったのだけど、会場が狭めだから難しいのかな。あと、展示作品をぜひ販売して欲しい。ウェブに掲載されているとはいえ、紙媒体を意識して描かれたものであればやはり紙で読みたい。